オフィシャルブログ

日別アーカイブ: 2025年8月18日

ももちゃんのおかきだより~part3~

皆さんこんにちは

株式会社米菓桃乃屋の更新担当の中西です。

 

~おかき・せんべい~

お茶うけの定番として愛されるおかき・せんべい。実は、原料や製法、地域によって姿を変えながら、日本の米文化とともに発展してきました。起源から現代の多様化まで、通史でたどってみます。


用語の整理:せんべい・おかき・あられの違い

  • せんべい:主にうるち米(または小麦粉)を生地にして伸ばし、焼く・乾燥させる。関東では「醤油せんべい」が代表格。

  • おかき/あられもち米でついたを乾かして、焼くまたは揚げる。大きめが「おかき」、小粒が「あられ」(雹=あられが語源)とされます。

  • 地域差も大きく、関西では小麦を使う「瓦せんべい」など小麦系せんべいも根づいています。


1. 起源(古代〜中世)

  • 古代から米は神事と深く結びつき、干した餅を焼いた焼き餅はハレの日の供え物にも。

  • 「煎餅(せんべい)」という語は中国渡来の菓子名(小麦の薄焼き“煎餅=ジィエンビン”)に由来する表記が日本で転用されたとされ、呼称は諸説あります。


2. 町人文化が育てた味(江戸時代)

  • 関東では、利根川水運と醤油醸造(野田・銚子)の発展が重なり、焼いた生地に醤油ダレを塗っては炙る「江戸前の醤油せんべい」が街道筋の名物に。埼玉の草加は旅人の土産として知られるように。

  • 関西では公家・寺社文化の菓子技が洗練し、餅を干して焼くおかき・あられや、小麦粉に卵・砂糖を加える瓦せんべいなどが確立。

  • ひな祭りにひなあられを食べる風習も江戸〜明治にかけて広まりました(甘味中心の関東、しょうゆ風味の関西など地域差あり)。


3. 近代化と全国ブランドの誕生(明治〜大正)

  • 精米技術・乾燥技術が進歩し、通年で均質な生地づくりが可能に。

  • 鉄板・金網・木型など道具の改良で生産効率が上がり、土産物から日常のおやつへ。

  • 大正期には、今も親しまれる**新形状(例:半月や三角、柿の種状など)**が生まれ、バリエーションが一気に拡大。


4. 大衆スナック化(昭和〜平成)

  • 戦後の食生活の安定とともに需要が急増。連続焼成炉・ガス遠赤外線オーブン・熱風乾燥機などの導入で大量生産が可能に。

  • 個包装乾燥剤の普及(1960〜70年代)でサクサク感の長期保持が実現。贈答・配り菓子として全国区へ。

  • ざらめ・海苔巻・七味・チーズ・バターしょうゆ、揚げおかきなど、味づくりが多彩に。地域色や土産文化も相まって“ご当地せんべい”が花開きます。


5. いま:匠の技と新発想(令和)

  • 原料米の産地指定やブレンド研究、グルテンフリー志向、海外輸出の拡大(“Rice Crackers”“Arare”として定着)。

  • 伝統の手焼き・挟み焼きを現代に磨き直したクラフト系も人気。鉄板で挟んで香ばしさを閉じ込める製法は、焼き色・香り・食感のコントラストが魅力で、昔ながらの“焼きの妙”を再発見させてくれます。


せんべい・おかきが長く愛される理由

  1. 米の国の普遍性:原料が身近で、茶文化とも抜群に合う。

  2. 保存性と携帯性:乾菓子ゆえに贈りやすく、旅や街道文化と共鳴。

  3. 火加減のドラマ:同じ生地でも焼き・揚げ・タレの含ませ方で味が化ける“職人の余白”。

  4. 地域性:水・米・醤油・海苔など土地の個性が味に乗るため、旅の楽しみになる。


作りの基本工程(代表例)

  1. 原料米を洗米→浸漬→蒸す

  2. 窯でつく(もち米は餅に)/うるち米は粉砕・練り

  3. 成形(伸ばす・切る・型抜き)

  4. 乾燥(旨みを凝縮)

  5. 焼成または揚げ

  6. たれ付け・塩振り・海苔巻きなど仕上げ

細部は産地や工房ごとに異なり、ここに“味の個性”が宿ります。


小さな年表

  • 古代:焼き餅が神事・供え物に

  • 江戸:醤油流通とともに江戸前せんべい、関西でおかき・瓦せんべいが確立

  • 明治〜大正:製粉・乾燥・型の進化、形や味の多様化

  • 昭和:連続焼成・個包装で大衆化、全国ブランドへ

  • 平成〜令和:クラフト回帰とグローバル化、健康志向・産地表示が進展


おわりに

おかき・せんべいは、米・火・道具・土地の物語です。時代ごとの技術と暮らしが香ばしさに折り重なり、今の一枚へ続いています。
今日のひと休みには、ぜひ焼きの違いたれの含ませ方に意識を向けてみてください。同じ“米菓”でも、歴史と職人の工夫が味わいの奥行きを教えてくれます。